クラーク記念国際高等学校様 導入・運用レポート 第4回

第4回 電子図書館今後の展望

■前回までの流れ
クラーク記念国際高等学校では、2018年に株式会社日本電子図書館サービスが提供する「LibrariE」を導入しました。その後、様々な工夫を凝らしながら、生徒にとってより価値の高い図書館となることを目指し運営を続けています。最終回の4回目のレポートでは、電子図書館の未来について、また我が校で今後予定している計画について考えてみたいと思います。
■社会とつながり、さらに発展する電子図書館を求めて
文部科学省が2008年に発表した「これからの学校図書館の活用と在り方等について」によると、学校図書館の機能・役割は、(1)読書センターおよび学習・情報センターとしての機能(2)教員のサポート機能(3)その他の機能 の3つとされています。その他の機能とは、「子どもたちの居場所の提供」と「家庭・地域における読書活動の支援」です。つまり、学校図書館は単に生徒や教員が知識を得る場所ではなく、教室内の固定された人間関係から離れ別の人間関係を形成できる場としての役割を期待されています。このような現実の学校図書館の役割を、電子図書館が完全に担うことはできません。しかし、電子図書館だからこそ現実の図書館にはできないことも容易になるはずです。
例えば、電子図書館間の協力が可能になれば、遠く離れた学校図書館との連携にも意味が生まれます。我が校では、専門性の高いコースや専攻で学ぶ生徒が多く在籍しています。彼らがより専門性の高い知識を求めた時、現在の蔵書数では全ての要望に応えることはできません。しかし、連携先の学校に求める資料があればこれほど心強いことはありません。もちろん、その前提として、電子図書館の運営に関わるすべての組織がWin-Winの関係を保てるような仕組みを考えなくてはなりませんが、電子図書館のさらなる広がりが期待できるように思います。
また、「貴重図書の共有」は電子図書館だからこそできる可能性があります。多くの大学などが貴重図書のデジタルアーカイブをHPなどで個別に公開していますが、この貴重図書を電子図書館という同一のプラットフォームで共有することができればユーザーにとって利便性が高まり大きな価値が生まれます。所蔵する資料を大学ごとに分類したり、資料とともに学校紹介をつければ、所蔵資料から大学に興味を持つというような新しい進路選択の方法が生まれるかもしれません。
■今後LibrariEに期待していること
インプレス総合研究所が2019年7月に発表したデータによると、2018年度の電子書籍市場は3122億円と前年度から約12%増えており、数年で数倍に膨れ上がりました。様々な電子書籍を提供するアプリが登場する中で、やはり「見やすく」「使いやすい」ことは大きな強みにつながります。
「LibrariE」も様々な機能が備わっていますが、それぞれが後少しずつ、利用しやすければ電子図書を運営する側もページをより工夫しやすくなるのではと期待しています。
例えば、生徒が自分で読んだ本を評価する機能(「イイネ」をつける等)があれば、他の生徒の興味をひくきっかけになるでしょう。読後コメントを書き込める機能があれば、メディアリテラシーの教材としても一役買うと思います。
また、TOPページはもう少し繊細に手を加えたい部分です。中でも、「特集」につける説明文は、一部だけでもTOPページで見られるようになればいいと考えています。個々のコンテンツに設定したコメントも、検索結果一覧の画面で目に入らなければ効果は半減します。半端に途切れたコメントであっても、そこに興味をそそられる生徒は少なからず存在します。まずは「生徒の目に入る」ことが重要であると考えています。
これまでLibrariEを運営する中で、サービス提供元である株式会社日本電子図書館サービス様にいろいろなご助力・ご助言をいただいて参りました。これからも、生徒がより読書に親しめるような様々な工夫を共に行っていければと思っています。
■我が校における電子図書館の今後
とはいえ、環境やシステムの発展を待っているだけでは、今目の前にいる生徒たちへの読書推進はできません。
これまで行ってきた様々な工夫で、我が校の電子図書館でも一定の貸出数を保つようになりました。かといって気を抜いて努力を怠れば、翌月の貸出数は減少します。「常に目新しいページ構築」「何かおもしろいものがある」と期待させる工夫は常に行う必要がありますが、さらに読書層を広げるために、この10月よりもう一つ、新たなコーナーを設けることにしました。その名も「あなたのイチオシ、教えてください」です。
リクエスト同様、MicrosoftのFormsというアンケート作成機能を用いて生徒からイチオシの本とコメントを募り、それを「特集」として取り上げようという、ただそれだけのコーナーではありますが、実はこれは生徒たちのリクエストを反映させたものなのです。「感想をコメントできればいい」「イイネボタンがあればいい」という生徒たちのリクエストはつまり、生徒たちの「伝えたい」気持ちの表れです。鉄は熱いうちに打てではありませんが、生徒が熱さを持ったそのタイミングで何かしらの方策を打つ。生徒の想いに応える姿勢を見せる。それが、今後の電子図書館の発展につながると思っています。また、このような生徒の声を株式会社日本電子図書館サービス様と共有することで、電子図書館全体の発展にも寄与できるのでは、との思いもあります。
■最後に
電子図書館の導入のおかげで、多くの生徒にとってこれまで以上に読書が身近になりました。選書委員に所属して読書習慣の啓発運動に取り組んでくれたり、図書館の運営に協力してくれたりと、電子図書館を通して自らの自主性を育んでいる生徒も見られます。リクエストを通して生徒との新しい形のコミュニケーションが生まれ、私たちが想定していたよりも、生徒が読書に対して積極的であるということにも気づかされました。
電子図書館は大きな可能性に満ちており、今後ますます発展していくと考えられます。今後も株式会社日本電子図書館サービス様と協力関係を築きながら、生徒の学力向上と電子図書館文化の形成に貢献していく所存です。
※クラーク記念国際高等学校について
1992年に開校したクラーク記念国際高等学校は、通信制高校の自由なカリキュラムを生かし、生徒一人ひとりの才能開花を目指した教育をこれまで提供してきました。クラークに入学する生徒は「通学型プログラム」と「通信型プログラム」の大きく分けて2つのプログラムを選択します。その中から、さらに生徒自身の興味関心に合わせ、コースや専攻、選択授業などを選び自分にあった時間割を組み立てることができるようになっています。
こうした特徴ある教育システムの成果として、近年では海外大学や国公立大学など難関大学への進学者も増加傾向にある一方で、オリンピック出場を目指すスポーツ選手など学外活動も重視する生徒の入学も目立つようになり、生徒の多様性が広がっています。
クラーク記念国際高等学校は「中卒勤労者のための学校」というイメージだった通信制高校に新しいあり方を示したパイオニアとして、多くのフォロワーを生み出しました。我が校の開校以前は日本に5校しかなかった通信制高校は、今では250校以上に増えています。