クラーク記念国際高等学校様 導入・運用レポート 第3回

第3回 電子図書館導入後の実績と運用方法について

■前回までの流れ
電子図書館導入後、思うようにログイン数が伸びず、原因を解析したところ、(1)そもそも電子図書館自体の存在を知らない(2)知っているがログインができない(パスワード忘れなど)(3)ログインしても読みたい本がない(4)いつ覗いても同じ内容 という問題があることがわかりました。第2回では、(1)(2)に対し、認知向上のための活動とシングルサインオンの導入で問題解決を図りました。第3回では、(3)(4)を解決するための取り組みを紹介いたします。
■生徒と作る電子図書館 その①
電子図書館を活用したコンテストの開催、シングルサインオンの導入によって認知をあげ、電子図書館ログインまでの環境を整えたところ、大幅にログイン数が増えました。そこで次に、電子図書館を継続的に利用してもらうための工夫を行いました。
その一つが、購入方法の変更です。初年度はある程度の書籍を一括購入しましたが、生徒のニーズに応えられているか分かりませんでした。よって、生徒のリクエストを元に、毎月新刊を購入することにしました。Microsoft Formsというアプリを用いて「本のリクエスト」コーナーを作り、図書館内にバナーを設置。生徒の声が直接届く構造を作りました。
直後に、読みたい本をリクエストするコーナーの他、こちらが提示した書籍の中から読みたい本を選んでもらう「新刊リクエスト」のコーナーも設けました。実は、生徒が「読みたい」とリクエストする本は、市場に出たばかりの最新刊であったり、そもそも電子図書化をしていないものだったりすることが少なくありません。そうした「リクエストが通らない!」という生徒のストレスを少しでも軽減したいと考え、紀伊國屋書店様のお力をお借りして「絶対に購入可能」な本を選択式でリクエストするシステムを構築したのです。
さらに、電子図書館全般の要望を受け付ける「その他のリクエスト」を設置したところ、「おもしろかった本にイイネできる機能があったら面白いと思う」など生徒のアイデアが寄せられる等、様々な形で生徒の声を拾えるようになりました。
TOPページのリクエストコーナー(左)とリクエストフォーム(右)
■生徒と作る電子図書館 その②
生徒たちのリクエストを活用しながら毎月の図書選定を行う一方、今年度(2019年度)用の一括選書の際にも、一部について生徒自身に関わってもらうことにしました。全国のキャンパスに呼びかけ、11キャンパス総勢83名の選書委員を結成。紀伊國屋書店様にご助力頂き、生徒用の選書リストを作成しました。生徒たちはここから予算内で購入書籍を選定するほか、電子図書館をもっと快適にするために様々な活動を行なってもらいました。
生徒による選定図書は電子図書館の特集として「選書委員セレクト」という選書委員による選定図書を紹介したり、選書委員のオススメを掲載したポスターをキャンパスに掲示するなどして、積極的に学内のプロモートを行いました。

選書委員セレクトの特集(上) 電子図書館利用促進ポスター(下)
■新鮮さを演出
いつ覗いても同じ印象にならないような工夫、というのはどの学校の先生方も行っているかと思いますが、当校でもTOPページに掲載する情報を定期的に更新するようにしています。「夏休みにオススメの超大作」や「今月のイチオシ!」など、時節に合わせた特集コーナーを作るのはもちろん、ジャンルも生徒の貸出履歴をもとに独自に細分化し、生徒が読みたい本・興味のあるジャンル等を見つけやすくする工夫をしています。TOPページの画像は生徒たちが制作したものを毎月更新しています(第2回参照)。
また、TOPページに「ちょっとした違和感」や「遊び」を加えることで貸出数が伸びたケースもあります。以前、どうしても子どもたちに読んでほしい本があったので、「特集」を組んだのですが、ひと月が経とうとしても貸出数はゼロ。見出しに魅力がないのかもと考え、見出しのみを変更したところ、ポロポロと読者が増えました。
とはいえこうした更新を日常的に継続するのは難しいので、そういったときは「お知らせ」をぽんと放り込んでいます。特に「お知らせ」することはなかったりするのですが、TOP画面を開いたとき「NEW」の文字があるだけで興味を引かれることもありますので、常に「目新しさ」を生徒に感じてもらえるような工夫をしています。
そうすると、読書習慣のついた子どもたちは「目新しさ」に捕らわれず定期的に本を読むようになり、むしろ「特集コーナー」には現れないようなマイナーな本を発見するようになります。宝探しのような感覚で本を探してくれているのだとすれば、こんなに嬉しいことはありません。この辺りについてはアンケート等でまた生徒の声を分析してみたいと思います。
※クラーク記念国際高等学校について
1992年に開校したクラーク記念国際高等学校は、通信制高校の自由なカリキュラムを生かし、生徒一人ひとりの才能開花を目指した教育をこれまで提供してきました。クラークに入学する生徒は「通学型プログラム」と「通信型プログラム」の大きく分けて2つのプログラムを選択します。その中から、さらに生徒自身の興味関心に合わせ、コースや専攻、選択授業などを選び自分にあった時間割を組み立てることができるようになっています。
こうした特徴ある教育システムの成果として、近年では海外大学や国公立大学など難関大学への進学者も増加傾向にある一方で、オリンピック出場を目指すスポーツ選手など学外活動も重視する生徒の入学も目立つようになり、生徒の多様性が広がっています。
クラーク記念国際高等学校は「中卒勤労者のための学校」というイメージだった通信制高校に新しいあり方を示したパイオニアとして、多くのフォロワーを生み出しました。我が校の開校以前は日本に5校しかなかった通信制高校は、今では250校以上に増えています。